2014年5月10日土曜日

泉可畏翁著 「誇り高き男」 

産経新聞が、インド映画、My Japanese Nieceの制作を報じたのは、昨年の六月のことでした。その時、私は、ある物語を思い出しました。インパール作戦に従事した小川三郎大佐(陸士38期)の事跡です。彼は、終戦間際のラングーンに残ったインド義勇軍の女性兵士八十名を無事インドまで送り届けると言う困難な任務を遂行、後、自決しました。此のことは、画像データでアップした大蔵栄一著「二・二六事件への挽歌(読売新聞社1971年刊)」351-354頁に引用されています(泉可畏翁著「誇り高き男」)。
読書の便宜を図る為、画像データの一部をテキストにし、本稿末尾に添付しました。尚、書籍本文の体裁は、出来るだけ踏襲しています。
亦、参考に、私のYouTubeとブログ記事のURLも付しておきます。
合掌。

参考
私のYouTubeとブログ記事のURLも付しておきます。
合掌。
My Japanese Niece
https://www.youtube.com/playlist?list=PLmTLOrBk14eA5lHxZUdq7yD_PpAM9FMyc
佐藤幸徳将軍追慕之碑









泉可畏翁著 「誇り高き男」
                      
 ある本を読んだ時「ビルマの悲風」という一章があ
り、何気なく読み続けると面白さにつり込まれて大要
次の様な話を一気呵成に読んでしまった。
    、大東亜戦争でシンガポールが陥落する直前、
タイのバンコクに岩畔機関という特務機関が出来た。
その機関はインド義勇軍を組織して対印度独立工作を
進めるというのが主な任務であった。その機関員に小
川三郎という少佐が配属されて来た。機関長の岩畔
(豪雄)大佐がその考課表を見ると、「陸士第三十八期
生卒業序列が尻から二番目、二・二六事件に連座して
停職六ヶ月」という豪の者で、機関長はどんなポスト
に使うべきか一寸迷った。ある晩夕食のとき機関長は
単刀直入、小川少佐に聞いて見た。「君は陸士の卒業
序列が尻から二番だがあまり勉強しなかったんだろう」
というと、小川少佐はすかさず「実に残念でたまりま
せん」と答えた。機関長はてっきり勉強もして見たが
不成績に終って残念だという風にごく普通の解釈をし
た。ところがそうではなかった。「私は陸士卒業の時
是非ビリで卒業し度いと努めたが惜しくも念願がはず
れて、尻から二番に止まり実に残念無念でした。ビリ
の卒業というのはなかなか難事中の難事ですね」と笑って
答え、さすがに剛腹の機関長も呆気にとられた。
(中略)                    
大東亜戦争が進んで印度の志士チャンドラ・ボースを
ドイツから迎えて印度義勇軍の首領とし、小川中佐は
その連絡に任じていたが、当時インパール作戦後のビ
ルマの日本軍は戦勢利あらず、後退に後退を重ねてい
た。サルウィン河畔に踏みとどまっていたチャンドラ・
ボーズに対し小川中佐は言った。「早く後方の国境山
脈まで退られよ」とすすめたが何といっても聞き入れ
ぬので、これ以上痩我慢すべきではないと諌めた。す
るとボースはいった。「約百名の女子義勇軍をラング
ーンに残して居ながら男の自分だけが、どうしてオメ
オメ後退出来るか」と。小川中佐はこれに応じて「分
った。私も日本人だ。日本軍人だ。誓って私が責任を
もって女子義勇軍を救出し、貴方の膝下に連れ帰るか
ら安心して後退せられよ」というなり方面軍の後方担
当参謀のところにやって来て、「最小限四台のトラッ
クを融通して呉れ」と頼んだ。参謀は一台もないとい
う。何とか工面して呉れと迫ったが無い袖はふれぬと
いう。小川中佐は厳然として「無い袖をふるのが参謀
の真の役割だ。ある袖をふるのなら誰れでも出来る」
と、続いていった。「自分は印度のボース首領に誓っ
たのだ。ラングーンに残された女子義勇軍は日本人の
面目にかけても断じて救出すると。こんどの大戦は或
は敗戦の破局を迎えるかも知れぬが、たとえどんな、
どん底に陥っても日本人は嘘をつかなかった。どんな
逆境に立っても日本の軍人は最後まで信頼出来るとの
イメージを印度の人たちに残して死に度い。形の上の
戦争ではたとえ敗れても心の上の戦争では敗れて居ら
ぬ証拠を世界の人々に示すべき絶好の機会だ。四台の
トラックはこのため何とかすべきだ」と熱情をこめて
いい放った。黙々としてその言葉を聞いていた参謀は
何もいわず、どこからか四台のトラックを工面して来
た。小川中佐は喜んでこれを受け取るとまっしぐらに包
囲下の首都に駆けつけて無事女子義勇軍約八十名を救
出しボース首領の手元に連れて来たがその後、同中佐
は南ビルマの戦闘で戦死した。

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