気になる書冊
出逢った古今東西の名著、その名を残しておきたい・・・・・。合掌。
2014年5月1日木曜日
櫻園先生遺稿
櫻園先生遺稿は、熊本新風連の方々が師として慕った林櫻園の著作である。本書は、昭和十八年、熊本の河島書店より、和装活字本の体裁で上梓された。私は、二十代前半の頃、古書で購入したのだが、購入価格が四万円を下らなかったように記憶している。懐かしい本である。
昇天秘説、宇気比考の冒頭等々、スキャナーで写真版にし、ご紹介申し上げる。
合掌。
2014年4月29日火曜日
ノウゴロヅツエフ著 「社会理想の法理学的研究」
嘗て、私は、「社会理想の法理学的研究」を自らが主催する出版所より、復刊した。以下の拙文は、その際に記したものである。
実は、数日前、本書の元版が、古書店で販売されていることを知り、早速注文、昨夕、入手した。写真の書冊であるが、ソフトカバーの体裁であった。私が、今日迄、所蔵して参ったものは、訳者、嶋野三郎氏の所蔵本で、ハードカバー箱入りであった。此の度、二種の体裁で刊行されていたことを確認した。
合掌。
今回入手したソフトカバー本。
訳者、島野三郎氏が翻訳に使用した原本。
社会理想の法理学的研究 再刊にあたって
「ぼくが、『社会理想の法理学的研究』という大部の書を訳して、北さんに贈るでしょう。そうすると、あれを弟や友人に読ましたいからさらに三冊送れとか、なお五冊送れとかいってきました。それでぼくはどんどん送ったものです。」(座談会北一輝を語る、宮本盛太郎氏編『北一輝の人間像』所収)と、後に嶋野三郎氏が語っている本書『社会理想の法理学的研究』は、ロシア思想史の研究のみならず、北一輝氏や青年将校たちを中心とする日本の国家改造運動を考察する上に於ても、必読の書物である。
短期間の内に、スタニコーイッチ著「天才と或女の結婚(大正11年、1922年刊)」、グリゴローウイッチ著「孤児アクリナ(大正12年、1923年刊)」、トルベツコイ著「西欧文明と人類の将来(大正15年、1926年刊)」、ブルガコフ著「経済哲学(昭和3年、1928年刊)」、アレクセーフ著「所有と社会主義-国家 的、私人的経済組織の基礎付(昭和4年、1929年刊)」、スタンケーウィチ著「露西亜諸民族の研究(昭和5年、1930年刊)」と数多くのロシア思想家の著作を翻訳、刊行した嶋野氏が、昭和6年(1931年)に、満鉄 調査課より上程したノウゴロヅツエフ著「社会理想の法理学的研究」は、凡そ、我が国の欧米帰朝組が及びもつかない知の鉱脈の産物である。おそらく、革命以前のロシアに学んだ青年のみがなし得る技であったのであろう。然し、その訳書に、我が国の高等教育機関に進まず、独学で、大著「国体論及び純正社会主義」を著した北一輝氏が興味を示した。彼のような日本人は、ロシアをヨーロッパ経由でなく、直接自ら(或は日本、アジア)に引き寄せて見る術を持っていた。
北氏が嶋野氏の訳書に興味を示した初めは、本書の刊行より随分遡るが、昭和6年(1931年)に、これほど大部の書を日本語に置き換える作業を為した嶋野氏の脳裏には、本訳書が得るであろうある読者層が予め想定されていたのかもしれない。(東亜経済調査局経済資料所収、アレクセーフ著「所有と社会主義」訳者序文参照)訳者の非凡な才が見受けられる。
最後に、本書を始めとするロシア思想家(但し、これらロシア思想家は、マルクス主義とは関わりを持たない今一つのロシアの知的鉱脈である。)の著作が我が国の国家改造運動を担う若者たち(例えば、陸、海軍の青年将校たち)に随分と読まれ、彼らの書架に散見されたという事実を記し、本書再刊の言葉とする。
今後、新たな大正、昭和の思想史が編纂され、上記の人々が顕彰されることを願い、小会では、今後とも基礎史料の提供を続ける所存である。
今回使用のテキストについて、後述する。画像データ制作に用いた原本は、訳者の嶋野三郎氏が刊行後の改訂作業の為、所蔵していたものである。よって、本文中の書き込み、線引き等は、全て、訳書自身の手になる。亦、本書の法量は、縦22.4cm、横16.0cm。所謂、菊版と称されるサイズである。
上坂氏顕彰会史料出版部 上坂直信 記
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