V・ゼンコフスキー(Vasilii Vasil'evich Zenkovsky)著「ロシヤ思想家とヨーロッパ(Russian Thinkers and Europe)」をご紹介申し上げます。本書には、私が青年時代より最も身近に感じて参ったコンスタンチン・レオンチェフ(Константин Леонтьев)に関する論考も収録されています。本書の著者は、大部のロシヤ哲学史(History of Russian Philosophy)も執筆しており、時間が許せば、本書も紐解かれると宜しいかと存じます。二著共に邦訳が存在いたします。
同じくYMCA PRESSから刊行されたニコライ・ベルジャーエフ(N. A. Berdyaev)のロシヤ的理念(The Russian Idea)も良書かと存じます。邦訳名は「ロシヤ思想史(創文社刊、ペリカン社刊)」。
ロシアは近くて遠い国です。亦、ロシアは、未だ我が国領土を占領した侭、返還することも無い、謂わば、仮想敵国なのです。さすれば、この国の心性を学ぶことは、我が国防衛の為にも重要なことではないでしょうか。然し、日本人が外国研究を行う場合、ともすれば、当該国のエピゴーネンになってしまうきらいがございます。私たちは、是非とも、そうしたことは避け、我が国存続の為に近隣諸国を学ぶという態度を堅守したいものです。
付記しなくてはならないことがございます。先に記した著者達は、ロシア革命の際、国外追放、或いは亡命を余儀なくされた人々です。実は、私が青年時代、近しく感じたロシアの思索者は、その殆どが、共産主義者により殺戮されたか国外に亡命を余儀なくされています。よって、今日ご紹介申し上げました書冊に記されているような考えを持った人々は、現在のロシアでは皆無とは申しませんが、未だ極少数しか存在しないのです。ただし、国外に住む亡命ロシア人たち(共産主義を良しとしなかった人々)の中では、こうした考えはそれなりの影響力を持っています。今後、こうした考えが、ロシア本国の人心の中にも浸透していけば、この仮想敵国も、いま少しは安心できる隣邦になるかと思うのです。
合掌。
付記
この拙文は、過日、別のブログに記したものです。本日、本ブログの準備にあたって、転載致しました。
合掌。